板 1- 前 次 新 レス
月厨隔離スレ
[43]茶鮎黒幕説:04/06/12 23:06 ID:???
そうしてわたしは彼を送り出した。
アジトにはもうわたししかいない。スヴェンも、ティアーユ博士もいなくなって、
トレインは新しい相棒を見つけるつもりもないようだ。
――――仕事が終わったら、どこか旅行に行かないか。
その言葉に、わたしは頷く事にした。哀しみが癒えることはないだろうけど。
あの人と一緒なら、乗り越えられそうな気がしたから。
いつも通りの日課を終えて、窓際に腰掛け風に当たった。
時計は正午にさしかかっている。
「―――――――――ぁ」
ざあ、と風が吹いた。
髪に結ぼうと手に取っていたリボンが飛んでいく。
それは白い。
とても昔、ある少女が彼に贈った、ただ一つの思い出だった。
リボンはどこまでも飛んでいく。
風に乗って、元から有りはしなかったかのように、並木の彼方へ融けていく。
「待って、それは―――――――――」
追いかけようとして、足を止めた。
アレは少女のものだった。
わたしの物ではないから、せめてそれだけでも持ち主の元に返すべきなんだろう。
前 次 新